アジャイル型開発のメリットやデメリットとは?ウォーターフォール開発との違いを解説
システム開発を検討している方は、アジャイル型開発を含めたさまざまな開発手法から、どの手法で進めるか決めているでしょうか。
アジャイル型開発に取り掛かる前に、そのほかの開発手法との違い、メリットやデメリットを把握しておくことが大切です。
そこで本記事では、アジャイル型開発のメリットやデメリット、ウォーターフォール型開発やプロトタイプ型開発との違いをご紹介します。
記事終盤では、アジャイル型開発が向いているプロジェクトや、失敗してしまう原因もお伝えするので、開発手法を選ぶ際の参考にしてください。
目次
アジャイル型開発とは?
アジャイル型開発は、変化に柔軟に対応しながら効率的にソフトウェアを開発する手法です。顧客のニーズやビジネス環境が変わることを前提とし、プロジェクトの途中でも要件の変更が可能です。
アジャイル型開発では、顧客やステークホルダーとの密接なコラボレーションを重視します。定期的なミーティングやレビューを通じて、開発の方向性や優先順位を確認し、必要に応じて調整します。
また開発チームは、自らの判断で作業を進めることが求められます。マイクロマネジメントを避け、チームの自律性と責任感を重視するのが特徴です。定期的に自らの作業方法やプロセスを振り返り、改善の取り組みを続けることが大切です。
アジャイル型開発には、Scrum、Kanban、Extreme Programmingなど、さまざまな実践的なフレームワークや手法が存在します。これらのフレームワークや手法は、アジャイルの価値観や原則に基づいて具体的な開発活動をサポートするものです。
アジャイル型開発の流れ
アジャイル型開発の流れは、以下のとおりです。
- 開発チームを結成する
- 取り組むテーマを決める
- スケジュールを立てる
- 開発を進める
- フィードバックをもとに改善する
- 次に取り組むテーマを決める
1〜6の工程を何度も繰り返しながら、開発を進めていきます。はじめに取り組むテーマを決める際、優先順位の高いものから取り組むことがポイントです。
また各プロジェクトの開発期間は、1週間〜4週間ほどで区切られることが多いです。短い期間の間に、要件定義や設計、実装、テスト、リリースなどを行います。
アジャイル型開発とその他手法との違い
ここでは、アジャイル型開発とウォーターフォール型開発・プロトタイプ型開発との違いを解説します。
ウォーターフォール型開発
アジャイル型開発は、短い期間ごとに要件定義からリリースを繰り返します。一方でウォーターフォール型開発は、要件定義からリリースなどが連続して進行し、ひとつのフェーズが完了しないと次のフェーズに進めません。
またアジャイル型開発は、イテレーションごとに要件を見直したり、優先順位を変更したりすることが可能です。それに対しウォーターフォール型開発では、1度要件定義が完了すれば、それ以降のフェーズでの要件変更が難しいです。
アジャイル型開発は、短いイテレーションごとの評価やフィードバックにより、早い段階でのリスクの識別と対応が可能となります。しかし、ウォーターフォール型開発では、前の段階に戻ることがほとんどないので、リスクの発見や対応が遅れるケースがあるでしょう。
このようにアジャイル型開発とウォーターフォール型開発では、開発の進め方やリスク管理などに違いがあります。
プロトタイプ型開発
短期間のサイクルで開発を進めるアジャイル型開発に対し、プロトタイプ型開発では初期モデルを作ってから開発を進めていきます。事前に初期モデルを作成すると、顧客やステークホルダーの要求や要件を明確にすることが可能です。
アジャイル型開発では、イテレーションごとに要件や優先順位を見直します。それに対しプロトタイプ型開発では、プロトタイプを通じて要件や設計の不明瞭な点、問題点を特定し、それに基づいて修正や調整を行います。
アジャイル型開発の手法の種類
ここでは、アジャイル型開発の手法の種類を3つご紹介します。
スクラム
アジャイル型開発のスクラムは、アジャイル型開発の一手法として特に人気のあるフレームワークです。短期間の反復開発サイクルを中心に、柔軟に変更を受け入れながらプロジェクトを進めていく方法論です。
この手法では、製品のビジョンを持ち、何を開発すべきかを管理します。毎日スタンドアップミーティングを行うケースが多く、前日の進捗、今日の予定、問題点などを共有します。
エクストリーム・プログラミング(XP)
エクストリーム・プログラミング(XP)は、アジャイル型開発の一手法として知られています。XPは1990年代にケント・ベックを中心とした開発者によって提唱されており、開発者たちの日常の実践に焦点を当て、品質の高いソフトウェアを迅速に提供するための手法として設計されています。
顧客の要求を直接取り入れ、常に最も価値の高い機能から開発を進めることで、迅速に価値を提供します。頻繁なリリースとテストを通じて、継続的なフィードバックを取得し、それに基づいて開発の調整を行います。
ユーザー機能駆動開発(FDD)
ユーザー機能駆動開発(FDD)は、アジャイル型開発の一手法として1990年代後半にジェフ・デ・ルカとピーター・コードンによって開発されました。FDDは、大規模なプロジェクトを扱う際にも適したアジャイル手法として認識されています。
プロジェクトの全体的な範囲やビジョンを理解したうえで、それを具体的な機能や要件のリストに分解します。このリストは、プロジェクト全体を通じて中心的な役割を果たすでしょう。
アジャイル型開発のメリット
ここでは、アジャイル型開発のメリットを3つご紹介します。
リリースが早い
アジャイル型開発では、開発作業を1〜4週間の短い期間で区切られます。各イテレーションの終了時には、機能を追加または改善したプロダクトのインクリメンタルなバージョンが完成するので、その分リリースが早まるでしょう。
また初期のリリース段階でユーザーにとっての価値が高い機能を提供することができ、早期の段階での市場投入やフィードバックの取得が可能になります。ユーザーやステークホルダーからのフィードバックを迅速に取得すれば、プロダクトの質や適合性を継続的に向上させられるでしょう。
修正にかかる工数が少ない
アジャイル型開発では、頻繁に成果物をリリースし、ステークホルダーやユーザーからのフィードバックを早期に取得します。この早期のフィードバックにより、問題や誤解が初期の段階で検出され、大規模な修正や再設計を行う前にこれらの問題に対処できるでしょう。
短いイテレーションまたはスプリントを採用することで、変更が行われる範囲が限定され、大規模な修正が必要になるリスクが低減します。要件や設計の誤解や不整合が、早期に検出・修正しやすい点がメリットです。
顧客のニーズに応えられる
アジャイル型開発では、頻繁に成果物をリリースし、ステークホルダーやユーザーからのフィードバックを早期に取得することが重視されます。これにより、開発中の製品が実際の顧客のニーズや要望に適合しているかどうかを確認し、必要に応じて方針を迅速に修正が可能です。
アジャイル型開発は開発途中の変更を敵視せず、むしろそれを価値あるフィードバックとして受け入れ、製品の改善や進化の原動力とする考え方を持っています。
アジャイル型開発のデメリット
ここでは、アジャイル型開発のデメリットを2つご紹介します。
スケジュールや進捗を把握しづらい
アジャイル型開発では、製品の要件や機能が開発の途中で変更されることがあるので、全体のスケジュールや進捗を把握しづらいデメリットがあります。最終的な製品の姿や機能が完全に決まっていなければ、具体的な完成時期や完成形を予測しづらいでしょう。
また大規模なプロジェクトや組織でアジャイルを導入する際には、複数のアジャイルチームの調整や連携の問題が発生することがあります。このような場合、全体の進捗やスケジュールを一元的に把握・管理するのが困難になるケースがあります。
方向性がブレてしまう
アジャイル型開発では、新たな要件や改善点が都度フィードバックとして上がってくることが一般的です。しかし、これが度を超えると、プロジェクトの初期の目的や方向性から大きく逸脱してしまう恐れがあります。
アジャイル型開発をはじめる際、明確な製品のビジョンやゴールが定義されていないと、多くの変更や新たな要件に流されやすくなります。この結果開発が散漫になり、方向性がブレてしまうことにつながるでしょう。
またステークホルダーからの要求が頻繁に変わる、または多数のステークホルダーから異なる要求がある場合、それらの要求をどのように優先順位をつけて取り込むかが難しくなるケースがあります。
アジャイル型開発で成功するポイント
ここでは、アジャイル型開発で成功するポイントを2つご紹介します。
進め方を定義する
アジャイル型開発には、複数のフレームワークや実践方法が存在します。プロジェクトの性質やチームの特性に合わせて、最も適切なフレームワークや方法を選定し、それに基づいて進め方を定義することが重要です。
チーム内での進め方やルールを定義する際は、全員の意見やフィードバックを尊重し、共通の理解を持つことが求められます。このようなプロセスを通じて、チームの一体感やコミットメントを高められるでしょう。
また進め方やルールを定義したあとも、それを継続的にチーム内で共有し、必要に応じて説明や再確認を行うことがポイントです。これにより、全員が同じ方向に進むことができるようになります。
品質やチーム状況を可視化する
品質やチーム状況の可視化によって、チームの進捗状況や問題点が一目でわかるようになり、迅速な意思決定や適切なアクションを取れるようになります。
タスクボードやバーンダウンチャートなどのツールを使用すると、どのタスクが完了しているのか、どのタスクに遅延があるのかが明確になるでしょう。
また進捗の遅れや品質に関する問題点などが可視化されることで、問題点を早期に発見し対応できます。
アジャイル型開発で失敗してしまう原因とは?
アジャイル型開発で失敗してしまう場合、いくつかの原因があると考えられます。主な原因は、開発メンバー同士でのコミュニケーションの頻度が少ない、リーダーが存在しない、発注者が積極的に意見を述べないことの3つです。
開発メンバー同士でのコミュニケーションが行われないと、変更すべき点や改善点を見つけられないまま、開発を進めてしまう恐れがあります。
またアジャイル型開発では、開発メンバー同士だけではなく、発注者と受注者がコミュニケーションを取ることが重要です。そのためには、各々が意見を述べやすい環境を整えることを意識しましょう。
毎回ミーティングで仕切ってくれる存在を決めるために、リーダーとなる役割を複数人に振っておくと良いでしょう。
アジャイル型開発が向いているプロジェクト
アジャイル型開発が向いているプロジェクトは、以下のとおりです。
- ECやSNSなどのWebサービス
- Webアプリやスマホアプリ
Webサービスやゲームなどの場合、開発中やリリース後にユーザーのニーズが変わってしまうことも多く、その変更に柔軟な対応が必要なことがあります。
また類似するサービスも多く存在するため、ユーザーの反応に応じながら迅速にシステムを改善していき、サービスをマネタイズすることが大切です。
このような場合、計画をじっくり立て、それに合わせてリリースしていくといった開発手法よりも、変化を前提としたアジャイル型開発のほうが向いているといえるでしょう。
まとめ
アジャイル型開発は、短期間で要件定義からリリースまでを何度も繰り返す開発手法です。ほかの開発手法よりも早くリリースでき、開発途中で変更点があってもその都度対応できる点がメリットです。
ただし、何度も変更点が見つかると、定義された定義から方向性がぶれてしまう恐れがあります。はじめから定義が明確になっていない場合は、最終チェックまでの具体的なスケジュールが把握しづらい点も考慮すべきでしょう。
アジャイル型開発で進める際、常に品質やチーム状況をチェックすることがポイントです。特にECやSNSなどのWebサービス、Webアプリやスマホアプリの開発を検討している方は、それらのサービスの開発におすすめのアジャイル型開発で進めてみてはいかがでしょうか。