社内システムを自社で開発するメリット・デメリットとは?
社内システムは、人事、会計、販売、物流、顧客関係管理など、企業・組織に必要な機能を備えたITインフラのことです。
本記事では、社内システムの開発方法や自社で開発するメリット・デメリットをご紹介します。
そのほか、自社での開発が難しい場合の対処法もお伝えするので、社内システムの開発を検討している場合はぜひ参考にしてください。
社内システムとは?
社内システムとは、企業や組織の内部で使用されるソフトウェアやITインフラです。
人事、会計、販売、物流、顧客関係管理など、組織のさまざまな機能をサポートするためのシステムが含まれます。
業務の効率化、情報の共有、意思決定の迅速化を実現するために設計されており、企業の独自のニーズや業務プロセスに合わせてカスタマイズされているのが一般的です。
社内システムの開発方法
ここでは、社内システムの開発方法を2つご紹介します。
スクラッチ開発
スクラッチ開発とは、社内システムをゼロから設計・構築する開発手法のことです。既存のテンプレートやソフトウェアフレームワークに頼らず、要件定義から設計、実装、テスト、リリースまで、すべてを独自に行います。
スクラッチ開発のメリットは、カスタマイズの柔軟性と独自性です。標準的なソリューションでは満たせない要件や、特定の業務フローに合わせたシステムを構築することができます。
また、将来的な拡張性や他のシステムとの統合なども、柔軟に設計することが可能です。
一方、開発にかかる時間とコストが高くなる可能性があり、技術的なリスクやプロジェクトの管理が複雑化するケースもあります。
システムのメンテナンスやサポート体制を整える必要があるため、継続的なリソース投入が求められるでしょう。
パッケージ開発
パッケージ開発とは、社内システムを開発する際に、既製のソフトウェアパッケージやフレームワークを使用する手法です。
一般的な業務プロセスやビジネスニーズに合わせて、設計された既存の製品を購入し、組織の要件に合わせて設定やカスタマイズを行います。
既製のソフトウェアは多くの場合、広範な機能を持ち、すぐに使用できるため、開発にかかる時間の短縮が可能です。
また、多くのユーザーによってテストされており、安定性と信頼性が高い傾向があります。
一方、既製品であるため、組織の独自の要件に完全に一致しない場合や、将来的な変更が難しい場合があります。他のシステムとの統合や、独自のプロセスに適応させるために追加のカスタマイズが必要となる場合もあるでしょう。
社内システムを自社で開発するメリット
ここでは、社内システムを自社で開発するメリットを3つご紹介します。
1. 現場からの要求に即座に応えられる
現場から新しい機能の追加や既存機能の改良に対するリクエストがあった場合、外部ベンダーを通じてシステムを変更するよりも、自社開発で迅速な対応が可能です。
自社開発の場合、社内のコミュニケーションチャネルを活用できるため、変更内容やスケジュールについてスムーズに話し合うことができます。
また社内開発では、現場からのフィードバックを受けて、システムをより柔軟に変更できるでしょう。ビジネスの状況や現場のニーズに合わせて、機能を追加したり、ワークフローを最適化したりすることが可能です。
自社開発の場合、開発チームはシステムの長期的な運用を担当することが多いため、継続的な改善が容易です。現場の要求に合わせて、システムの改善を繰り返し行うことで、業務プロセスの最適化や効率化が図れます。
2. ユーザーサイドの業務知識を持った人材が開発に携われる
開発に携わる人材がユーザーサイドの業務知識を持っていると、要件定義の精度が高くなるでしょう。具体的な業務フローや実務でのニーズに基づいて、システムの設計や機能を決定できるため、要件が現実的で効果的になります。
また、社内システムを実際に利用する現場と開発チームの間のコミュニケーションがスムーズになります。技術的な用語を使わずに、業務の観点から必要な機能を説明できれば、システムの開発や修正が迅速に進むでしょう。
開発に携わる人材が実際のユーザーの業務知識を持っていると、システムのユーザビリティが向上します。ユーザーが使いやすく、直感的に操作できるシステムを設計するためには、ユーザーの視点に立った設計が重要です。
3. 今後の追加開発に活かせる
自社開発の場合、システムの基盤やアーキテクチャを自社の開発チームが把握しているため、今後の追加開発や拡張が容易です。システムの設計思想や技術的な構成を熟知しているため、変更や機能追加の際にスムーズに作業できます。
自社開発の社内システムは、将来的な拡張を考慮して設計できるため、追加開発に適しています。企業の成長やビジネスの変化に合わせて、システムに新しい機能を追加したり、既存機能を拡張したりする際に、柔軟に対応できるでしょう。
また、自社開発チームがシステムの運用を担当することで、ユーザーからのフィードバックや現場のニーズに基づいて、継続的にシステムを改善できるようになります。これにより、システムの品質向上と業務効率の改善を図れるでしょう。
社内システムを自社で開発する際の注意点
ここでは、社内システムを自社で開発する時の注意点を2つご紹介します。
1. 人的リソースを確保する必要がある
自社開発を成功させるためには、適切なスキルと経験を持つ人材が必要であり、そのリソースを十分に確保することが重要です。
具体的には、プログラミングやシステム設計、データベース管理、プロジェクト管理など、多様なスキルセットを持つ人材が必要です。業務プロセスの理解やセキュリティ知識など、システムに関連する広範な専門知識も必要となります。
人材不足やスタッフの多忙さによって、開発プロジェクトが遅れる可能性があります。そのため、計画的なリソース配置や新規採用を含む人的リソースの確保が大切です。
また、開発だけでなく、システムの運用・保守や将来的な追加開発のために、継続的なサポート体制も必要です。リソースの確保には、システムの運用と保守に必要な技術者を配置することも含まれます。
社内システム開発に携わる人材は、技術の進化に合わせて継続的なスキルアップが求められます。技術者のトレーニングや学習の機会を提供し、開発チームのスキルを維持・向上させることが重要です。
2. ブラックボックス化する恐れがある
ブラックボックス化とは、システムの内部構造や設計が理解されず、特定の個人やチームに依存してしまう状況を指します。
システムの開発や維持において、特定の個人や小規模なチームに過度に依存すると、知識が偏在してしまうリスクがあります。その結果、システムの設計や機能に関する情報が外部に伝わらず、他のメンバーが理解できなくなるでしょう。
ブラックボックス化が進むと、システムの運用や保守に問題が生じやすくなります。特定の技術者がいないと問題解決が困難になり、システムの安定性や信頼性に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、担当者が退職した場合、システムの維持が難しくなることもあります。
社内システムを開発する時のポイント
ここでは、社内システムを開発する時のポイントを4つご紹介します。
1. 業務の効率化につながるか
業務の効率化を目指すためには、まず現在の業務プロセスを詳細に分析することが重要です。
どの部分が非効率であるか、どのような問題があるかを把握し、システム開発によってどのように改善できるかを明確にしましょう。
また社内システムは、手作業や繰り返し作業の自動化により、業務の効率化を図ることができます。例えば、データ入力や情報の整理、報告書の作成などのタスクを自動化することで、スタッフがより重要な業務に集中できるようになるでしょう。
2. 属人的なシステムにならないか
属人的なシステムは、特定の開発者や担当者だけがシステムの詳細を知っているため、知識の偏在が起こります。
担当者が不在になったり、退職したりした際に、システムの運用や保守に問題が生じる可能性があるでしょう。
システムを属人的にしないためには、ドキュメンテーションが重要です。システムの設計や機能、開発プロセスを文書化して、他の開発者や運用スタッフが理解できるようにすることで、知識の偏在を防ぎます。
3. コストに見合った効果が期待できるか
社内システムを開発する際、最初に開発コストを正確に見積もることが重要です。システム開発には、開発チームの人件費や開発ツールの購入費用、テストやデプロイメントの費用、運用・保守費用など、さまざまなコストが含まれます。
コストに見合った効果が期待できるかを判断するために、開発によって得られるビジネス効果を評価します。
例えば、業務の効率化や生産性の向上、コスト削減、顧客満足度の向上など、期待される効果を具体的に示すことで、投資対効果(ROI)が見積もりやすくなるでしょう。
4. 業務の優先順位や導入範囲が明確になっているか
まず、システム開発の目的に合致する業務プロセスを特定することが必要です。企業全体の業務フローを理解し、どの部分をシステムで支援するのかを明確にすることで、開発の対象範囲や優先順位を決定する基礎が整います。
限られたリソースで最大限の効果を得るためにも、業務の優先順位を適切に設定することが重要です。
業務の重要性や現在の課題、期待される効果を考慮しながら、システムを導入する優先順位を決定しましょう。これにより、開発プロジェクトが効率的に進行し、成果を迅速に得られます。
社内システムの開発に不安な場合の対処法
ここでは、社内システムの開発に不安な時におすすめの対処法をご紹介します。
ノーコード・ローコード開発ツールを利用する
ノーコード・ローコード開発ツールは、プログラミングの知識やスキルがなくてもシステムやアプリケーションを開発できるように設計されています。
基本的に、ドラッグ&ドロップやテンプレートを利用して、簡単に機能を追加できます。より高度なカスタマイズや機能を追加したい場合には、少しだけコードを書くことができるローコード開発ツールを活用すると良いでしょう。
ノーコード・ローコードツールを利用すると、従来のプログラミングに比べて迅速にシステムやアプリケーションを開発できます。特に、開発期間を短縮し、迅速な導入を目指している場合におすすめです。
ただし、ノーコード・ローコードツールは、開発において柔軟性を提供しますが、非常に複雑なシステムやカスタマイズには限界があるので理解しておきましょう。
外部発注する
外部発注をすると、システム開発に特化した専門家や企業の知識と経験を活用できます。外部発注を受ける企業や組織は、効率的で効果的な開発手法を持っているので、社内に欠けている技術的なリソースを補うことが可能です。
また、社内でのリソースやスキルの不足も補い、開発を迅速に進められます。専任の開発チームが担当するため、プロジェクトの進行が遅れるリスクが低減されるでしょう。
社内システム開発の専門家は、最新の技術やトレンドに精通していることが多いため、最新技術を活用したシステム開発が可能です。
ただし、完全自社で開発するよりも、外部発注したほうが費用がかかるケースがあります。予算を確認した上で、外部発注するか検討すると良いでしょう。
まとめ
社内システムを自社で開発する場合、現場のニーズへの即時対応や業務知識を活かした追加開発などのメリットがあります。一方で、人的リソースやブラックボックス化への注意も必要です。
開発のポイントとして、業務効率の向上や属人性の排除、コスト対効果の評価、導入範囲の明確化が重要です。開発に不安がある場合、ノーコード・ローコードツールの利用や外部発注も検討できます。
これから社内システムの開発を検討している場合は、自社で開発するか外部発注するか、どのようなツールを活用するか、などのポイントを明確にしておくと良いでしょう。