システム保守の費用の相場はどれくらい?予算の妥当性を確認する方法を紹介
システムを開発した後、システム保守を行う必要がありますが、具体的にどのような業務をすべきかわからない方がいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、システム保守の業務内容や保守にかかる費用の相場を解説します。
そのほか、システム保守にかかる費用を削減する際のポイントもお伝えするので、予算が限られている場合はぜひ参考にしてください。
目次
システム保守とは?
システム保守は、既存のシステムやソフトウェアを維持し、安定した動作を維持するための活動全般を指します。主な目的は、システムの機能や性能を確保し、バグの修正、アップデートの適用、セキュリティの向上などを通じてシステムの状態を健全に保つことです。
システム保守は、システムの寿命全体にわたり、継続的な作業が必要です。これにより、システムが適切に機能し、利用者やビジネスの要求に対応できるようになります。
システム保守の内容
ここでは、システム保守の主な業務内容を5つご紹介します。
ソフトウェアアップデート
ソフトウェアアップデートにより、新しい機能や機能の拡張が行われることがあります。これにより、ユーザーエクスペリエンスが向上し、最新の技術や要件に対応できるようになります。
アップデートは、既知のバグや不具合の修正を含むことがあります。ソフトウェアの安定性が向上し、ユーザーがスムーズかつエラーフリーに利用できるようになるでしょう。
また、システムや他のソフトウェアとの互換性を維持するため、新しいハードウェアやソフトウェアに対応するアップデートが提供されます。その結果、古いバージョンからの移行がスムーズに行えます。
ハードウェアメンテナンス
ハードウェアメンテナンスは、システム保守の一環であり、コンピューターシステムや関連するハードウェア機器の正常な動作と性能を確保するための活動です。
ハードウェアコンポーネントは、埃や汚れが蓄積すると過熱しやすくなります。定期的な清掃や冷却ファンの確認・清掃は、正常な動作と性能を維持するために重要です。重要なハードウェアコンポーネントや消耗品の交換も業務の1つです。
また、ハードウェアのファームウェアやドライバの定期的な更新は、セキュリティの向上や新しい機能のサポートの実現につながります。
トラブル発生時のサポート
トラブルが発生した際、サポート担当者は問題を診断し、原因を特定するための分析を行います。具体的には、ユーザーとコミュニケーションを取ったり、問題の進捗状況や対策についてユーザーに適切に情報提供したりするケースがあります。
問題が複雑で解決が難しい場合、上級のサポート担当者やエンジニアにエスカレーションすることがあるでしょう。必要に応じて、専門的な知識や経験を活用して問題に対処します。
また、トラブルの原因を分析し、同様の問題が再発しないように予防策を提案することも大切です。予防策がしっかり練られていれば、将来のトラブルを最小限に抑えられます。
インフラストラクチャの維持
インフラストラクチャの維持は、システム保守の中で基盤となるハードウェアやソフトウェア、ネットワークなどの基本的な構成要素を効果的かつ効率的に維持するための活動を指します。これにより、機器の故障や劣化を早期に検知し、システムの可用性を維持します。
具体的には、オペレーティングシステム、データベース、セキュリティソフトウェアなどのソフトウェアコンポーネントを最新の状態に保ちます。アップデートやパッチ適用により、セキュリティの向上や新しい機能の利用が可能となるでしょう。
また、ルーターやスイッチなどのネットワーク機器を最適化し、ネットワークの性能を向上させます。トラフィックの監視やネットワークの拡張なども含まれます。
ライセンス管理
システム保守におけるライセンス管理は、ソフトウェアやハードウェアの利用に関連するライセンス契約や規定に従って、適切な権利を管理し、合法的かつ効果的にリソースを使用することを指します。
ソフトウェアやハードウェアのライセンスが有効期限を迎える前に、更新やアップグレードを行う業務も含まれます。その際、最新の機能やセキュリティ対策を適用させることも大切です。
また、各ライセンスには許可された使用数が定められています。この数を超えないように厳密に管理し、ライセンスコンプライアンスを確保します。
システム保守費用の相場
システム保守にかかる費用は、システム開発費用の5〜15%が年間費用といわれています。予算をいくらに設定すれば良いかわからない場合は、システム開発費用の15%ほどと設定しておくと十分でしょう。
サービス別の保守費用例
一般的な退勤管理システムなどの基幹システムの場合、年間1万5,000〜75万円ほどかかります。顧客管理システムなどの業務支援システムは、年間〜60万円ほどが相場です。
また、ECサイトなどのWebシステムは年間7万5,000〜150万円ほど、コミュニティアプリは年間15万〜75万円ほど、ECアプリは年間30万〜45万円ほど、ゲームアプリは年間120万円〜ほどが目安となっています。
システム保守費用の内訳
ここでは、システム保守にかかる費用の内訳をご紹介します。
ソフトウェア・ハードウェア
ソフトウェア・ハードウェアの保守にかかる費用は、システム開発費用の15%ほどが相場です。例えば、システム開発に100万円かかった場合、ソフトウェア・ハードウェアの保守に15万円ほどかかると考えられます。
委託料
システム保守を外部に委託した場合、委託料が発生します。委託料の相場は、年間240万〜600万円ほどです。業務内容や会社によって費用が異なるので、複数の会社で見積もりを依頼することがポイントです。
システム保守費用の適正稼働率試算法とは?手順を紹介
ここでは、システム保守にかかる費用の適正稼働率試算法について手順を紹介します。
1. 稼働する時間帯を明確にする
はじめに、稼働する時間帯を明確に把握しましょう。稼働時間が長ければ長いほど、保守に必要な費用も高くなります。
多くのシステムは24時間稼働していますが、そのなかで保守にかける稼働時間をどれくらいにするかがポイントです。たとえば、1日8時間ほどに抑えれば費用を3分の1に軽減できますが、24時間体制を整えたほうがすぐにトラブルに対応できるメリットがあります。
2. 稼働率を算出する
システムの稼働率を算出する方法は、「保守にかける年間の稼働時間÷(システムの1日の稼働時間×365日)×100」です。システムの稼働時間が1日8時間、保守にかける稼働時間が年間2,000時間の場合、2,000時間÷(8時間×365日)×100=25%となります。
最終的に求められた稼働率から、適切な稼働時間であるか判断できます。
3. 保守作業・人員数・機器費用などを算出する
システム保守に必要な作業や人員数、機器費用などを算出すると、保守にかかる費用が妥当なのか判断する際に便利です。人員数や機器費用などが過剰に設定されている場合、それにともなって保守費用も高くなる傾向にあります。
4. 算出された保守費用と予算を比較する
最終的に、算出した保守費用と予算、または実際にかかっている保守費用を比較し、妥当であるか判断しましょう。保守費用が予算を超えている場合は、予算を拡張したり、保守費用を削減できるか再考したりすると良いでしょう。
システム保守費用を削減する際のポイント
ここでは、システム保守費用を削減するときのポイントを4つご紹介します。
委託する業務の範囲を明確にする
業務の範囲を明確にする際には、本当に必要な機能やサービスに焦点を当てます。過剰なサービスの委託や不要な機能の保守は無駄な費用を生む可能性があるでしょう。
委託契約が締結された後も、変更が生じた場合には変更管理のプロセスを確立します。変更があった際には、追加の費用やスコープの変更がないかを検討し適切な対応を行いましょう。
また、委託先との透明性を確保し、定期的なコミュニケーションを取ることも大切です。進捗報告や課題の共有を通じて、業務の進行状況や課題に対する理解を深めます。
保守内容を定期的に見直す
保守対象のシステムや機能が、ビジネス目標や要件と整合しているかどうかを定期的に評価しましょう。不要な機能や過剰な保守は、コストを増加させる原因となります。
具体的には、システムや機能の利用頻度や重要度を評価し、それに基づいて保守の優先順位を決定します。重要な機能には適切な保守リソースを割り当て、利用頻度の低い機能は最小限の保守で対応すると良いでしょう。
また、技術は進化するため、古い機能やシステムの保守には追加の労力やコストがかかるケースがあります。新しい技術やプラットフォームへの移行を検討し、適切なタイミングで進化に対応しましょう。
複数の委託先を比較する
システム保守を外部に委託する場合、複数の委託先を比較し、自社に合ったところを探しましょう。その際、各社に見積もりを依頼し、価格だけでなく、提供されるサービスやサポート体制、品質保証などの要素も含めて比較することがポイントです。
見積もり書を確認するとき、隠れた費用や追加料金がないか確認しましょう。そのほか、自社で任せたい範囲以外のサービスが提供されているケースがあるので、不要なサービスが組み込まれていないかも確認しておくことが大切です。
クラウド化する
クラウドサービスを利用することで、自社でのインフラストラクチャの構築やメンテナンスに伴う負担を軽減できる可能性があります。一般的には、クラウドプロバイダーがハードウェアやネットワークの管理を行い、企業は必要なリソースを柔軟に利用できます。
クラウドサービスは、従量課金制度を採用しているところが多いです。必要なリソースのみを使用するため、従量課金モデルに移行することで、変動費を適用しやすくなるでしょう。
また、クラウド環境では、必要に応じてリソースを拡張または縮小できるメリットがあります。需要の変動に柔軟に対応でき、無駄な資源の使用を避けることができます。
まとめ
システム保守は、システムの順調な運用を確保するために必要な活動であり、ソフトウェアのアップデート、ハードウェアのメンテナンス、トラブル対応などが含まれます。
費用の相場はサービスやシステムの規模により異なりますが、主にソフトウェア、ハードウェア、委託料の3つに内訳されます。委託するかしないかで、費用が大きく異なるでしょう。
また、保守費用を削減するには、業務範囲の明確化や定期的な見直し、複数の委託先比較、クラウド化がポイントです。最適なシステム保守戦略を構築することが重要です。