システム開発とソフトウェア開発の違いとは?ソフトウェア開発の手法や流れを解説
システム開発とソフトウェア開発は、IT業界でよく使用されている用語ですが、違いをご存じでしょうか。
ソフトウェア開発を検討している方は、システム開発との違いを理解し、ソフトウェア開発の種類や開発手法の種類を確認することが大切です。
そこで本記事では、システム開発とソフトウェア開発との違いをはじめ、ソフトウェア開発や開発手法の種類をご紹介します。
記事終盤では、ソフトウェア開発の流れをお伝えするのでぜひ参考にしてください。
目次
システム開発とソフトウェア開発の違いとは?
システム開発とソフトウェア開発は、どちらも情報技術の文脈で使われる用語ですが、意味や範囲が異なります。ここでは、システム開発とソフトウェア開発の違いを解説します。
システム開発
システム開発は、特定のビジネス要件やユーザーの要件を満たすための情報システム全体を設計、構築、導入するプロセスです。ソフトウェアだけでなく、ハードウェア、ネットワーク、データベース、インターフェースなどの設計や構築も含まれる場合があります。
ビジネスプロセスやワークフローの分析、要件定義、システム設計、実装、テスト、導入、保守・運用といった一連の工程を行います。
ソフトウェア開発
ソフトウェア開発は、プログラムやアプリケーションの設計、コーディング、テスト、デバッグ、保守のプロセスです。システム開発の一部として行われることもあれば、独立して行われることもあります。
ソフトウェア開発は、具体的にはソースコードの書き方、アルゴリズムの設計、データ構造の選択など、ソフトウェアの内部構造や動作に関連する活動に焦点を当てます。
ソフトウェア開発の種類
ここでは、ソフトウェア開発の種類を3つご紹介します。
Webシステムソフトウェア
Webシステムソフトウェアは、一般的にインターネットやイントラネット上で動作するソフトウェアのことです。
Webシステムは、ユーザーが専用のクライアントソフトウェアをインストールすることなく、Webブラウザを通じてアクセス・操作が可能です。インターネット接続があれば、どのデバイスからでもアクセスできます。
サーバー側での管理が中心となりますので、更新や保守が一元化され、効率的に行えます。必要に応じてサーバーのリソースを追加・調整することで、多数のユーザーに対応可能です。
アプリケーションソフトウェア
アプリケーションソフトウェアは、コンピュータ上で特定のタスクや活動をサポートまたは実行するためのソフトウェアです。ユーザーが直接操作することで、その機能やサービスを利用できます。
アプリケーションソフトウェアは、エンドユーザーのニーズやタスクを解決・支援するために設計されています。一般的にアプリケーションソフトウェアは、ユーザーフレンドリーなインターフェースを持っており、短時間で操作方法がわかる点が特徴です。
組み込みシステム
組み込みシステムとは、特定の機能やタスクを実行するために特定のハードウェアに組み込まれて動作するソフトウェアのことです。組み込みシステムは、家電製品、自動車、工業機械、医療機器など、私たちの身の回りの多くのデバイスに搭載されています。
組み込みシステムは限られたメモリ、処理能力、ストレージを持つハードウェア上で動作します。これにより、効率的なコードの記述やリソースの最適化が求められるでしょう。
多くの組み込みシステムは、リアルタイムで動作する必要があり、応答時間や処理速度が極めて重要です。一度稼働を開始すると、組み込みシステムは長期間にわたり連続して動作することが多いです。
ソフトウェア開発の手法の種類
ソフトウェア開発を行う前に、どのような手法で開発を進めるのか決めましょう。ここでは、ソフトウェア開発の手法の種類を4つご紹介します。
ウォーターフォール型開発
ウォーターフォール型開発は、プロジェクトを連続的なフェーズに分割し、ひとつのフェーズが完了した後に次のフェーズへと進むという進行方法を採用しています。各フェーズが前のフェーズから次のフェーズへと流れ落ちるように進行する様子が、滝のようであることから名付けられました。
プロジェクトの流れが明確であり、ドキュメンテーションがしっかりしているため、大規模なプロジェクトや初めてのプロジェクトでの進行が容易です。
ただし1度次のフェーズに進むと、前のフェーズへ戻って変更を加えるのが難しくなるため、初期の要求仕様の定義が非常に重要です。変更が難しく、フレキシビリティに欠けるため、要件が途中で変わる可能性があるプロジェクトや、迅速なフィードバックと改善が求められるプロジェクトには不向きでしょう。
アジャイル型開発
アジャイル型開発は、迅速なフィードバックと反復的な開発を重視する手法です。アジャイルは敏捷性を意味し、変化に素早く適応することを目指した開発手法でもあります。
顧客やステークホルダーとの頻繁なコミュニケーションを通じて、要件や変更を迅速にキャッチアップします。高い柔軟性と適応性が特徴で、頻繁なリリースによる早期の価値提供にもつながるでしょう。
ただし、適切なコミュニケーションや協力が不可欠なため、チームの結束やスキルが求められます。
プロトタイプ型開発
プロトタイプ型開発は、初期の段階で実際に動作するプロトタイプを作成し、これをベースに要求の詳細化やシステムの完成形を追求する手法です。特に要求が曖昧であったり、エンドユーザーが具体的なイメージを持ちにくかったりする場合に有効です。
曖昧な要求や期待を明確化でき、ユーザーの満足度を高められる可能性があります。開発初期の段階で、誤解やミスマッチを低減できる点もメリットです。
ただし、初期のプロトタイプ作成に時間とコストがかかるケースがあります。プロトタイプを過度に詳細化しすぎると、本格的な開発の障害となってしまう恐れがあるでしょう。
スパイラル型開発
スパイラル型開発は、計画、リスク分析、エンジニアリング、評価といったフェーズを繰り返し行い、システムを反復的かつ増分的に開発する手法です。特に、リスク管理を中心に据えた開発プロセスを強調しています。
高いリスクの部分を早期に特定し、対応することができる点がメリットです。ユーザーのフィードバックを繰り返し取り込むことができ、変更の要求や新たな要件に対し、柔軟な対応が可能です。
ただし、繰り返しのプロセスのため、時間やコストが予測しにくいケースがあります。適切なリスク管理や評価が求められるので、専門知識や経験が必要です。
ソフトウェア開発の流れ
ここでは、ソフトウェア開発の流れを8つのステップに分けてご紹介します。
1.企画
この工程では、ソフトウェアの目的や目標、主要な機能、およびプロジェクトの範囲など、開発の方向性や基本的なアイディアを明確にします。
ソフトウェアを開発する背景や理由などを明確にするために、市場調査や競合分析、エンドユーザーからのフィードバックの収集を行わなくてはいけない場合があるでしょう。
正確な企画を行うことで、後のフェーズでのリソースの無駄遣いや方向性のずれを防げます。企画フェーズでのコミュニケーションは、開発者とステークホルダー間の期待値を一致させるために不可欠といっても過言ではありません。
2.擦り合わせ
この工程は、関係者間の意見や認識を一致させるための調整や確認のプロセスです。全員が同じ方向を向いてプロジェクトを進めるために、不可欠なステップでしょう。
擦り合わせを行うことで、関係者全員の認識や期待を一致させるだけではなく、今後の開発フェーズでのトラブルや誤解を防ぐことにもつながります。共通の認識や目的が確立されると、プロジェクトの進行がスムーズになり、リソースの最適な利用を実現できるでしょう。
3.要件定義
この工程は、開発するソフトウェアが満たすべき要件や機能を詳細に明確にします。要件定義を通じて、開発チームとステークホルダーは共通のソフトウェアのビジョンや目標に合意します。
鮮明な要件が存在することで、後のフェーズでの作業がスムーズに進行し、リソースの浪費や再作業を防げるでしょう。
また要件の不明確さや認識のずれは、後の開発段階での大きなリスク要因となる恐れがあります。要件定義をしっかりと行うことで、これらのリスクを低減できます。
4.基本設計及び詳細設計
基本設計と詳細設計は、要件定義で明確にされた要件をもとに、システムやソフトウェアの具体的な設計を行うための段階です。
基本設計は、システム内でのデータの流れや、外部システムとのインターフェース、画面、バッチ、帳票などを設計します。具体的には、パフォーマンス、セキュリティ、スケーラビリティなどの非機能要件を考慮した設計を行います。
詳細設計は、基本設計で考えたコンポーネントやモジュールの内部構造や動作を詳細に設計する工程です。具体的には、テーブルの詳細、インデックス、トリガー、ストアドプロシージャなどの具体的なデザインを行います。
基本設計や詳細設計で適切な設計を行うと、後のフェーズでのバグや問題の減少につながるでしょう。
5.開発
この工程では、基本設計や詳細設計で定義された設計内容をもとに、実際のプログラムコードを書く作業を行います。使用するプログラミング言語やフレームワークは、プロジェクトの要件や技術的な制約にもとづいて選ばれるでしょう。
設計フェーズでの考慮事項や要件を適切に反映し、品質の高いコードを書くことが求められます。開発フェーズは、ソフトウェア開発の大部分の時間を占めることが多いため、効率的なコーディングやテストが重要です。
6.単体試験・結合試験
単体試験や結合試験は、開発されたコードが正しく動作するかを確認するための工程です。
単体試験は、個々のコードの単位が正しく動作するかを確認するためのテストです。ツールなどを使用して自動的にテストを実行する場合もあります。
結合試験は、複数のコード単位やコンポーネントが連携して正しく動作するかを確認するためのテストです。異なるコンポーネント・モジュール間のインターフェースでの問題やバグがないかを確認することが目的です。
単体試験や結合試験は、ソフトウェアの品質を保証する上で非常に重要です。早期段階でのバグの検出や修正が可能となり、開発の効率や品質が向上するでしょう。
7.総合試験
総合試験は、ソフトウェア開発プロセスの中で全体的な品質を確認するための重要なフェーズです。ソフトウェア全体としての機能や性能、安定性などをテストします。
テスト中に発見された不具合や問題点を報告し、それにもとづいて修正を行います。不具合の修正後、修正が他の部分に悪影響を及ぼしていないか確認するために、再度テストを実施します。
8.リリース
リリースは、完成したソフトウェア製品やアップデートをエンドユーザーや顧客に提供するためのプロセスです。
リリース後は、ユーザーや市場からのフィードバックや評価を収集することができます。これにより、今後のアップデートや改善の方向性を決定するための貴重な情報を得られるでしょう。
まとめ
ソフトウェア開発はシステム開発の一部であり、システム開発はより幅広い範囲の活動を包括するものです。
さらにソフトウェア開発は、Webシステムソフトウェア・アプリケーションソフトウェア・組み込みシステムの3つに分けられます。
ソフトウェア開発を検討している方は、ウォーターフォール型開発やアジャイル型開発などの手法を決めて、事前に開発の流れを把握しておくと良いでしょう。