AWS Backupとは?EC2やS3などの対象サービスや利用するメリットを紹介
AWSの導入を検討している方や利用しはじめて間もない方は、どうやってデータをバックアップできるかわからない方がいるのではないでしょうか。
万が一データが消えて復元できなくなってしまうのを避けるために、AWS Backupの対象となるAWSサービスや利用するメリットなどを把握しておきましょう。
本記事では、AWS Backupとは何か、利用するとどのようなメリットがあるかなどを解説します。
そのほか、AWS Backupの主要機能やベストプラクティスについても解説するので、これからAWSの利用を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
データの重要性と保護の必要性
ビジネスや個人の意思決定はデータに基づいて行われるほど、データは重要な情報源です。正確なデータは、戦略の策定や効果的な意思決定に欠かせません。
データを適切に分析して有益な情報を抽出することで、競争力を獲得できるでしょう。たとえば市場動向や顧客の嗜好を把握し、効果的な製品やサービスを提供する際に役立ちます。
またデータはハードウェアの故障、人為的なミス、サイバー攻撃などによって失われる恐れがあります。重要な情報が失われると、意思決定やビジネスの継続性に影響を及ぼすリスクがあるため、データ保護が重要だといえます。
バックアップと復元の基本概念
バックアップは、データを保護するために定期的にコピーを作成するプロセスです。これにより、データの損失や破損時に元のデータを復元できるようになります。
バックアップ戦略を計画する際に、どのデータをバックアップするか、どの頻度で実行するか、どのリージョンに保存するかなどを定義しましょう。AWS Backupでは、異なるAWSサービスからデータをバックアップするためのジョブを作成できます。
また復元は、バックアップから作成したコピーを使用してデータを元に戻すプロセスです。復元によって、データの誤削除や破損、システム障害などの問題を解決できます。
AWS Backupとは?
AWS Backupは、AWS(Amazon Web Services)が提供するクラウドベースのバックアップサービスです。
EC2、RDS、EBSなどのAWSサービスで生成されたデータを自動的にバックアップし、保護します。バックアップのスケジュール設定、保持ポリシー、リカバリが簡単に行え、セキュアでコスト効率の高いデータ保護を実現します。
AWS Backupの主要機能
ここでは、AWS Backupの主要機能を4つ紹介します。
バックアップ計画の作成と管理
バックアップ計画は、データの保護とバックアップのスケジューリングに関する設定を管理するための機能です。
バックアップ計画を作成する際には、どのデータをバックアップするかを選択します。これには、EC2インスタンス、RDSデータベース、EBSボリュームなど、AWS上のさまざまなサービスが含まれます。
また、バックアップの頻度やタイミングを設定することも重要です。デイリー、週次、月次などのスケジュールを定義し、データのバックアップを自動化することで、手動でのバックアップ作業を省略できます。
スケジュールされたバックアップジョブの設定
スケジュールされたバックアップジョブは、特定のデータを定期的にバックアップするための設定とスケジュールを指定する機能です。
バックアップジョブの設定では、バックアップデータを保持する期間やライフサイクルを設定します。過去のバックアップを一定期間保存し、古いデータを自動的に削除することで、ストレージの最適化を図ります。
また、バックアップジョブの実行状況やエラーメッセージを受け取るための通知を設定することで、問題が発生した際に適切なアクションを取ることができるでしょう。
バックアップの保持ポリシーとライフサイクル
バックアップの保持ポリシーとライフサイクルでは、バックアップデータをどれだけの期間保持し、どのタイミングでデータを削除するかを設定します。バックアップデータの保持期間を指定することで、バックアップデータを一定期間保持し、過去のデータにアクセスできるようにします。
バックアップデータには、活性期間と非活性期間があります。保持ポリシーに基づいて、データは活性期間内は保持され、非活性期間になると削除の対象となります。保持ポリシーに従って自動的に削除されると、不要なデータがストレージを占有することを防ぎ、ストレージコストを削減できるでしょう。
クロスリージョンバックアップと復元
通常、AWS Backupは同じリージョン内のリソースに対してバックアップと復元を提供します。しかし、災害や障害が発生した場合にリージョン全体が影響を受ける可能性があるため、クロスリージョンバックアップと復元の機能は重要です。
この機能により、バックアップデータを異なるAWSリージョンにコピーし、バックアップデータの冗長性とリージョン間の災害復旧を強化できます。リージョン内での問題が発生した場合に、別のリージョンからバックアップデータを復元することで、サービスの継続性を確保できるでしょう。
またクロスリージョンバックアップと復元を使用する場合、AWSアカウント内の異なるリージョン間でのリソースアクセスの権限設定を適切に行う必要があります。
AWS Backupを利用するメリット
ここでは、AWS Backupを利用するメリットを3つ紹介します。
バックアップの一元管理が可能
AWS Backupを使用することで、異なるサービスやリージョンのバックアップを一元的に管理できます。バックアップの作成、スケジュール設定、保持ポリシーの管理などが統一されたダッシュボードやコンソール上で行えます。
一元管理により、バックアップの作成、スケジュール設定、保持ポリシーの管理が効率的に行え、人為的なミスや漏れを減らすことができます。
バックアップコンプライアンスの向上
多くの業界や地域では、データ保護とバックアップに関する法的・規制上の要件が存在します。AWS Backupを使用することで、これらの要件を遵守し、バックアップ関連のコンプライアンスを向上させられます。
AWS Backupではバックアップデータの保持期間を設定できるため、これにより法的要件に従ってデータを特定の期間保存して、データ削除に関する規制に準拠できます。
またコンプライアンス要件を遵守することで、法的なリスクや制裁を軽減できます。データの不足や適切な保持の欠如による問題を未然に防げるでしょう。
低コストで利用が可能
AWS Backupは、初期費用がかからず低コストで利用できます。バックアップ関連のコストを削減しながらも、高いデータ保護を実現したい方におすすめです。
AWS Backupは、データの重複排除や圧縮、保持ポリシーに基づくデータの自動削除などにより、ストレージコストを最適化できます。これにより、コストを削減しながら高いデータ保護を実現できます。
AWS Backupを利用するデメリット
ここでは、AWS Backupを利用するデメリットを3つご紹介します。
ランニングコストがかかる
AWS Backupの料金体系は、使用量に基づいているので、バックアップするデータ量が多ければ多いほどコストが高くなります。また、データを長期間保持する場合も、コストが高くなる傾向にあります。
バックアップデータを保存するためのストレージスペースに対して課金されます。バックアップの作成・復元・削除などの操作も、課金対象となるので把握しておきましょう。
AWS Backupは、複数のAWSサービスと統合されているため、使用量とコストを正確に追跡するのが複雑になる場合があります。特に、大規模な環境では、コストを適切に管理するための継続的な監視と分析が必要です。
またAWS内でのデータ移動には、データ転送料金が発生するケースがあります。データ量の増加やバックアップの頻度の変更により、予想外のコスト増加が発生する可能性もあるでしょう。
リソースが限られている
AWS Backupでは、バックアップポリシーを設定して自動化することができますが、これらのポリシーには一定の制限があります。たとえば、ポリシーの適用範囲やスケジュールの柔軟性に限界があるので把握しておきましょう。
AWS Backupは、多くのAWSサービスと統合されていますが、すべてのAWSサービスやリソースタイプがサポートされているわけではありません。特定のリソースや環境に対応していない場合があり、追加のバックアップ手段を検討する必要が生じるケースがあるでしょう。
またAWSは、バックアップタスクやリカバリポイントなどのリソースに対してクォータや割り当てを設定しています。制限に達すると、追加のバックアップやリカバリ操作が制限されるケースがあります。
セキュリティやリスク管理がしにくい
AWS Backupでは、データの暗号化が重要です。適切な暗号化キー管理やセキュリティポリシーの設定が不十分な場合、データのセキュリティが脅かされる恐れがあります。
バックアップデータへのアクセス制御は、適切なIAMポリシーやロールを設定することで管理されます。これらの設定が複雑であり、誤った設定はセキュリティリスクを高めてしまう恐れがあるでしょう。
また、バックアップデータの共有や移動には慎重さが求められます。不適切な共有設定は、データ漏洩のリスクを増大させる恐れがあります。
AWS Backupを利用する流れ
ここでは、AWS Backupを利用する流れを5つのステップに分けてご紹介します。
1. AWS Backupコンソールからサインアップする
はじめに、AWSマネジメントコンソールにログインします。そして、AWSバックアップコンソールを起動します。
2. バックアッププランを作成してルールに必要な情報を入力する
「新しいプランを立てる」を選択すると、バックアップのルール設定が表示されます。バックアップルール名やバックアップの頻度など、項目を埋めていきましょう。
3. バックアッププランにリソースを割り当てる
作成したバックアッププランを選択したら、リソースを割り当てると、バックアッププランにもとづいたバックアップが開始されます。
4. モニタリングを行う
バックアップが開始されたら、すべての動作がアクティビティログに記録され、必要に応じてアクティビティログがモニタリングされます。その際問題が見つかれば、データを復元することが可能です。
5. バックアッププランを修正・削除する
バックアッププランを削除する際、事前にバックアッププランへのリソース割り当てをすべて削除しておく必要があります。ただし、修正する場合は割り当てを削除する必要がありません。
また、バックアップのライフサイクルやタグは、バックアップを作成したあとでも変更できます。
AWS Backupのサポート対象となるAWSサービス
AWS Backupは、どのAWSサービスで利用できるのか、サポート対象となるAWSサービスを紹介します。
引用:サポート対象の AWS サービスで、AWS Backup を動作させる方法について
- Amazon S3
- VMware 仮想マシン
- Amazon DynamoDB
- Amazon FSx ファイルシステム
- Amazon EC2
- Amazon EFS
- Amazon EBS
- Amazon RDSとAurora
- AWS BackInt
- AWS Storage Gateway
- Amazon DocumentDB
- Amazon Neptune
- Amazon タイムストリーム
- AWS Organizations
- AWS CloudFormation
ただし、他のAWS サービスが作成したバックアップは、AWS Backupを通した中央ガバナンスでは利用できません。
サポートされているすべてのサービスのデータ保護を一元管理するためにAWS Backupを設定するには、そのサービスの管理にオプトインする必要があります。バックアッププランを使用してオンデマンドバックアップを作成するか、バックアッププランを使用してバックアップをスケジュールし、バックアップボルトにバックアップを保存します。
AWS Backupのベストプラクティス
ここでは、AWS Backupのベストプラクティスについて3つの項目に分けて解説します。
バックアップ戦略の設計と実装
適切なバックアップ戦略を設計し実装することは、データの保護とリカバリのために非常に重要です。
バックアップ戦略では、どのEC2インスタンス、RDSデータベース、EBSボリュームなどをバックアップするか、バックアップの頻度、バックアップデータの保持ポリシーなどを設定する必要があります。
またバックアップデータの冗長性と災害復旧能力を高めるため、クロスリージョンバックアップを検討しましょう。異なるリージョンにバックアップデータを保存することで、地理的な障害に対する耐性を向上させます。
タグの活用によるバックアップの組織化
タグはリソースに関する追加情報を付加する手段として利用され、バックアップの管理や整理に役立ちます。
バックアップ対象となるEC2インスタンスやRDSデータベースなどのリソースにタグを付け、リソースに関する追加情報や識別子を提供し、バックアップの管理を容易にします。
AWS Backupではタグに基づいてバックアップ計画を設定できるため、特定のタグを持つリソースを自動的にバックアップ対象とすることができます。また、バックアップ対象の絞り込みを行う際に便利です。
モニタリングとアラート設定の最適化
モニタリングとアラート設定を適切に行うことで、バックアップジョブの状況や問題をリアルタイムで把握し、迅速に対応できます。
AWS BackupのコンソールやCloudWatchなどのツールを使用して、バックアップジョブの実行状況やエラーを監視する対象を設定します。特に、重要なリソースやバックアップ対象には、適切な監視を行うことが可能です。
また監視指標に対するアラート閾値を設定でき、バックアップジョブが異常を示す場合は、アラートが発生して適切な人々に通知されます。アラートの設定では、メールやSMS、Slackなど、選択した通知メカニズムに応じて設定が可能です。
復旧テスト
データの復旧テストを定期的に行い、データが正しく復旧できることを確認します。
まとめ
AWS Backupを利用することで、災害時や緊急時にデータが損失してしまうのを回避できます。
設定に応じて不要になったデータの削減が自動的に行われるため、使わなくなったリソース分のコストやストレージの削減にもつながります。
AWSの利用を検討している方は、導入方法や初期設定だけではなく、データの損失を回避するためにAWS Backupについても知識を深めておきましょう。